小規模事業者持続化補助金|経営者が見落としやすい7つのポイント【第20回対応】
「補助金が採択されたら、あとはお金が振り込まれる」
「通常は補助率が3分の2だから、自己負担は3分の1だけ考えておけばいい」
「補助金が使えるなら、少し高い設備を買った方がお得」
小規模事業者持続化補助金について調べていると、このように考えてしまう方もいるかもしれません。
ただ、実際の制度はそれほど単純ではありません。
前回の記事では、小規模事業者持続化補助金とはどのような制度なのか、対象者や補助額、申請の流れなどを初心者向けに解説しました。
今回はそこから一歩進んで、
「実際に補助金を利用する経営者が見落としやすいポイント」
について取り上げます。
補助金は、採択されることだけが目的ではありません。
むしろ大切なのは、
補助金を使った結果、会社の売上や利益がどう変わるのか
という部分です。
※この記事は2026年9月30日時点で公表されている第20回公募の情報をもとにしています。第20回はこれから申請受付が始まるため、採択実績については直近の第19回を参考にしています。
まず知っておきたい。直近の採択率は約47%
直近の第19回「一般型・通常枠」では、
申請件数:16,576件
採択件数:7,819件
となっており、採択率を計算すると約47.2%です。
およそ2社に1社が採択された計算になります。
一見すると、
「意外と採択されるのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、本当に注意したいのはここからです。
持続化補助金は、
採択=補助金が確定する制度ではありません。
採択後にも手続きがあり、事業を実施し、必要書類をそろえて実績報告を行い、その内容が確認された後に補助金額が確定します。
つまり、採択はゴールではなく、補助事業のスタート地点に近いものです。
1.「売上が増える」だけではなく「粗利」まで考える
補助金を使って広告を出したり、新しい設備を導入したりするとき、
「売上がどのくらい増えるか」
を考える経営者は多いと思います。
ただ、本当に重要なのは、その先です。
たとえば100万円を使って販促を行い、売上が150万円増えたとします。
一見すると、
「100万円使って150万円売れたから成功」
と思えます。
しかし、商品の原価率が40%だった場合、
150万円 × 60% = 粗利90万円
です。
つまり、100万円の投資に対して増えた粗利が90万円であれば、少なくともその時点では投資額を回収できていません。
補助金を考えるときは、
売上ではなく、売上総利益まで考える
ことが大切です。
持続化補助金は、単に設備や広告を安く購入するための制度ではありません。
その投資によって、最終的に事業をどのように伸ばしていくのかを考える必要があります。
2.「補助金が出るから買う」は順番が逆
たとえば、
「200万円の設備だけど、補助金が出るなら買ってもいいかな」
というケースです。
この考え方には少し注意が必要です。
先に考えたいのは、
「その設備を入れると年間いくら利益が増えるのか」
ということです。
仮に自己負担が100万円になる設備だったとします。
設備導入によって年間の粗利が20万円しか増えないのであれば、単純計算では自己負担額を回収するまでに約5年かかります。
一方で、年間100万円の粗利増加が見込めるのであれば、投資としての意味は大きく変わります。
そこで、補助金を利用する前に一度考えてみたい質問があります。
「補助金がなかったとしても、この投資をしますか?」
もし答えが「はい」であれば、補助金はもともと合理的だった投資を後押ししてくれる制度になります。
逆に、「補助金があるからとりあえず買う」となっている場合は、補助金を受け取ること自体が目的になっていないか、一度確認した方がよいでしょう。
3.自己負担額より「一度いくら払うのか」が重要
持続化補助金について、
「通常は補助率が3分の2だから、自己負担は3分の1」
と考えることがあります。
通常枠ではその考え方でよいケースが多い一方、特例の適用状況によって補助率が異なる場合もあります。
そのため、まずは自社がどの補助率に該当するのかを確認する必要があります。
そして、資金繰りという意味では、補助率とは別の問題があります。
補助金は、原則として事業者が先に支払いを行い、その後、必要な手続きを経て支払われます。
たとえば300万円の事業を行い、最終的に200万円の補助を受けられるケースを考えてみます。
最終的な自己負担は100万円です。
しかし、事業者側では一時的に
300万円分の資金を手当てする必要があります。
ここを見落としてはいけません。
もちろん、すべてを自己資金だけで準備するという意味ではありません。
金融機関からの融資や支払条件などを含め、補助金が入金されるまでの資金繰りをあらかじめ考えておく必要があります。
特に小規模な会社の場合、「最終的にいくら負担するのか」だけではなく、
「補助金が入金されるまで、最大いくらの資金を手当てする必要があるのか」
を確認しておくことが重要です。
補助金を使うことで、逆に一時的な資金繰りが厳しくなるケースもあります。
4.採択されても、すぐに発注してはいけない
これも非常に重要です。
持続化補助金では、
申請
↓
審査
↓
採択
↓
必要書類の確認
↓
交付決定
↓
事業実施
という流れになります。
ここで注意したいのが、「採択」と「交付決定」は違うということです。
「採択されたから設備を注文しよう」
「採択されたからホームページ制作会社と契約しよう」
と先に進めてしまうと、その経費が補助対象にならない可能性があります。
前回の記事でも触れましたが、補助金は採択された時点で自由に使えるお金になるわけではありません。
実際に事業を始められるタイミングまで確認したうえで進める必要があります。
5.実績報告の不備は「書類の問題」ではなく「資金繰りの問題」
補助事業が終わると、実績報告を行います。
ここで、「領収書や請求書を出せば終わり」と考えてしまうのも注意が必要です。
2026年8月5日時点で、持続化補助金事務局は、
実績報告の審査に提出から3~4週間程度
を要していると公表しています。
さらに、書類不足や記載ミスなどによって修正が複数回発生した場合には、
補助金額の確定まで3か月程度かかる場合がある
と案内しています。
つまり、書類に不備があると、「事務作業が増える」だけではありません。
補助金が入ってくる時期そのものが遅れる
可能性があります。
たとえば200万円の補助金を予定している会社で入金が数か月遅れれば、その期間は200万円を自社側で負担し続けることになります。
実績報告は、単なる事務手続きではなく、
会社のキャッシュフローに直結する手続き
と考えた方がよいでしょう。
6.売上予測は「○○万円増えます」ではなく掛け算で考える
事業計画を作る際、
「この取り組みにより年間500万円の売上増加を見込みます」
とだけ書いても、なぜ500万円なのかが分かりません。
そこでおすすめなのが、
売上を掛け算に分解する方法
です。
たとえばホームページを使って問い合わせを増やす場合、
月間問い合わせ数 20件×成約率 30%×平均客単価 7万円×12か月
= 年間504万円
となります。
このように書けば、
「なぜ504万円なのか」
が分かります。
さらに原価率が40%なら、
504万円 × 60% = 粗利302.4万円
となります。
ここまで計算すると、
「この投資を行う意味があるのか」
を経営者自身も判断しやすくなります。
補助金申請のためだけに数字を作るのではなく、
自社の経営を確認するために数字を使う
という考え方が大切です。
7.外部の専門家に任せても、経営計画そのものは経営者が考える
持続化補助金では、行政書士や中小企業診断士、コンサルタントなどの支援を受けながら申請準備を進めることもあります。
専門家に相談すること自体に問題はありません。
むしろ、
「この経費は対象になりそうか」
「計画と経費のつながりはおかしくないか」
「数字に無理がないか」
などを第三者と確認することには意味があります。
ただし、
経営計画そのものを完全に丸投げする
という考え方には注意が必要です。
持続化補助金は、事業者自身が現在の経営状況や課題を整理し、今後どのように事業を伸ばしていくのかを考え、その計画に基づく取り組みを支援する制度です。
そのため、専門家の支援を受けることはできますが、
自社の現状・課題・顧客・販路開拓策については、事業者自身がしっかり検討する必要があります。
自社のお客様が誰なのか。
なぜこの設備が必要なのか。
これを導入すると何が変わるのか。
売上はどう増えるのか。
こうしたことを一番理解しているのは、やはり経営者自身です。
専門家の役割は、
経営者の頭の中にある計画を整理し、制度に合わせて形にしていくこと
だと私は考えています。
補助金を検討するときに確認したい7つの数字
ここまでの内容を踏まえて、持続化補助金を検討するときには、次の数字を一度整理してみると分かりやすいと思います。
投資総額はいくらか
補助金入金までの最大資金需要はいくらか
最終的な自己負担額はいくらか
年間売上はいくら増える見込みか
年間粗利はいくら増える見込みか
自己負担額を何年で回収できるか
補助金がなくても実行したい事業なのか
たとえば、
投資総額 150万円
補助金 100万円
自己負担 50万円
年間売上増 300万円
年間粗利増 120万円
という計画であれば、
自己負担50万円に対して年間120万円の粗利増加が見込まれることになります。
もちろん実際の経営では、これ以外にも人件費や固定費などを考える必要があります。
それでも、
「補助金が100万円もらえる」
という見方だけより、
「50万円を自己負担して、いくら利益を生み出せるのか」
と考えた方が、経営判断としては分かりやすくなります。
第20回を検討している方は早めの準備を
第20回の一般型・通常枠は、2026年11月5日に申請受付開始、12月15日17時が申請締切予定です。
ただし、申請には商工会または商工会議所が発行する**事業支援計画書(様式4)**が必要です。
この様式4の発行受付締切は、
2026年12月4日
です。
申請締切より早いため注意してください。
「12月15日までに書類を作れば大丈夫」
ではありません。
経営計画を作り、必要書類をそろえ、商工会・商工会議所への手続きを行う時間も考える必要があります。
第20回への申請を考えている場合は、余裕をもって準備を始めることをおすすめします。
まとめ
小規模事業者持続化補助金というと、
「最大いくらもらえるのか」
「何が補助対象になるのか」
「どうすれば採択されるのか」
という部分に目が向きがちです。
もちろん、それらも大切です。
しかし経営者にとってもっと重要なのは、
補助金を使った結果、会社に何が残るのか
ということではないでしょうか。
設備を導入する。
ホームページを作る。
広告を出す。
それ自体が目的ではありません。
その結果、
新しいお客様が増える。
売上が増える。
粗利が増える。
そして投資したお金を回収する。
ここまで考えて、初めて補助金を使う意味が見えてきます。
補助金は、
「もらえるから使うもの」ではなく、「もともと必要だった投資を後押ししてもらうもの」
と考えると分かりやすいと思います。
申請を検討する際には、
「いくら補助されるのか」
だけではなく、
「この投資によって、自社はどう変わるのか」
を一度じっくり考えてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1.採択されたら補助金は必ずもらえますか?
A. いいえ。
採択後にも交付決定、補助事業の実施、実績報告などの手続きがあります。
また、対象経費として認められない支出があった場合などには、申請時に想定していた金額より補助金額が少なくなることもあります。
そのため、採択と補助金の確定は別のものと考えておく必要があります。
Q2.採択されたら、すぐ設備を注文してもいいですか?
A. 原則として、採択だけを確認して発注するのは避ける必要があります。
補助事業を開始できる時期を確認し、交付決定後に発注・契約等を行うことが重要です。
「採択されたから大丈夫」と自己判断して先に契約してしまわないよう注意してください。
Q3.補助金が後払いなら、自己資金が少なくても申請できますか?
A. 申請そのものは可能な場合がありますが、資金繰りについては事前に確認する必要があります。
補助金が入るまでの間は、事業者側で事業費を手当てする必要があるためです。
すべてを自己資金で準備するという意味ではありませんが、融資なども含め、
一時的にいくらの資金が必要になるのか
まで確認しておきましょう。
Q4.売上予測はどこまで細かく作ればいいですか?
A. 「年間500万円増える」とだけ考えるのではなく、
問い合わせ数 × 成約率 × 客単価
などのように、できるだけ売上が発生する仕組みを分解して考えると分かりやすくなります。
可能であれば、その先の粗利まで計算しておくと、投資効果をより判断しやすくなりま
す。
Q5.補助金が使えるなら、高い設備を購入した方がお得ですか?
A. 必ずしもそうとは限りません。
重要なのは設備の価格ではなく、その設備がどの程度売上や利益を生み出すのかです。
補助金がなければ購入しない設備であれば、本当に必要な投資なのかを一度確認してみることをおすすめします。
Q6.申請書は専門家に全部作ってもらえますか?
A. 専門家から申請支援を受けることはできます。
ただし、経営計画そのものを完全に丸投げするのではなく、自社の現状や課題、顧客、販路開拓策については事業者自身が検討する必要があります。
専門家には、経営者の考えを整理すること、制度への適合を確認すること、数字や計画の矛盾をチェックすることなどを支援してもらうとよいでしょう。
Q7.第20回はいつまでに準備すればいいですか?
A. 第20回の申請締切は2026年12月15日17時予定ですが、事業支援計画書(様式4)の発行受付締切は2026年12月4日です。
申請書の作成にも時間がかかるため、できるだけ早めに準備を始めることをおすすめします。
※本記事は2026年9月30日時点で公表されている小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉第20回の情報および直近の第19回採択実績等をもとに作成しています。制度内容やスケジュール等が変更される場合がありますので、実際に申請する際は必ず最新の公募要領・公式情報をご確認ください。




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